シンクロトロン放射光・レーザー光励起による弱相互作用系の電子状態計測法開拓
機能性分子薄膜の弱相互作用による電子状態変化を計測する技術開発を進めている。弱相互作用を定量的に評価するため、蒸気圧の低い大型分子対応の気相光電子分光実験装置を開発し、分子集合による電子状態の違いに関する議論を進めている。2014年度より新たに超短パルスレーザー光を励起源として電子状態を測定し、非弾性散乱、ホール緩和や励起子拡散など、電荷ダイナミクス関連の研究を開始した。
分子系の準粒子ダイナミクス:配向制御試料を用いることで精密実験が実施可能となり、これまで観測しえなかった物理現象が見え始めている。特に局所フォノンである分子振動の衣を纏った準粒子関連現象や、共鳴励起状態における瞬間近似の破綻現象について研究を進めている。
2020年より開始したUVSORにおける新型光電子運動量顕微鏡(Photoelectron Momentum Microscope)による研究推進をはかる。
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利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL6U, BL7U, BL5U, BL2B
ラボ装置:2PPE(建設中), TRPES(建設中), G3(gasUPS)
共同研究:ベルリン放射光施設BESSYII:ArTOF
機能性分子薄膜の光電子放出強度の理論解析と分子軌道撮影法の開発
高配向分子薄膜からの光電子放出強度の角度依存性について、多重散乱理論による強度解析を行い、有機分子薄膜構造の定量的解析を行うための方法論を検討してきた。その後、高配向試料では広波数空間二次元分解測定が分子軌道の可視化に対応することが指摘され、新たな量子計測ツールになりうると期待されている。BL6Uに設置された放射光を利用した光電子運動量顕微鏡による高効率計測が強力である。特に単層膜界面の分子配向に依存した電子波のポテンシャル散乱と干渉問題を定量化し、局在電子系における一電子近似の限界を吟味しつつ、弱相互作用系の物理現象を議論するための新たな方法論の構築を目指している。
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Chem.Phys.325,113(2006), JESRP184,261(2011), JESRP195,287(2014) etc
利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL6U, BL5U, BL7U
ベルリン放射光施設BESSYII:ArTOF
イタリア放射光施設Elettra:NanoESCA
ナノプラット装置:DA30
計算実験:多重散乱計算IACプログラム
有機半導体薄膜の電荷輸送機構の研究
有機半導体のバンド分散関係:良質な配向有機結晶膜を作製し、価電子エネルギーバンド分散を測定し、分子間相互作用の大きさ、ホールの有効質量など、バンド伝導移動度を評価した。更に幾多の実験的困難の克服により、有機単結晶試料に対して行う技術を確立し、世界で初めて分散関係の検出に成功した。またパルス光源を用いた飛行時間型高分解能角度分解測定により、有機単結晶の二次元バンド分散関係の完全決定実験を進めている。
有機半導体の電荷振動結合:配向有機超薄膜の作製により、大型の分子薄膜系における光電子スペクトルの高エネルギー分解測定を実現する方法論を開拓して、分子薄膜における伝導ホールと分子振動の結合状態を初めて実測し、ホッピング移動度(そのポーラロン効果を含む)を分光学的に得る方法を開拓した。これらの物理量を実測することで、輸送機構の解明を目指している。
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利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL7U, BL2B
ラボ装置:2PPE(建設中), TRPES(建設中), G3(gasUPS), A1(high-sensitiveUPS)
有機半導体薄膜の界面電子準位接合機構の研究
本質的には絶縁物である有機分子がn型/p型半導体として機能する起源を明らかにすべく研究を進めている。極めて高感度に光電子を捕捉し、評価可能な光電子分光装置を開発し、価電子バンドの10万分の1程度以下(10ppm)の微小バンドギャップ状態密度の検出に成功した。価電子帯トップバンドの状態密度分布がガウス型から指数関数型に変化し、基板フェルミ準位まで到達している様子をとらえた。光電子検出ダイナミックレンジを更に拡張すべく、日々装置改良も進めている。有機ドナー・アクセプター半導体分子間の弱いvdW結合における電荷分布変化から、分子と金属原子の局所的な強い化学結合によるギャップ準位形成までを統括し、エネルギー準位接合機構の本質的理解を目指している。
分子間相互作用に依存したイオン化エネルギーおよび電子親和力の絶対評価、無機半導体界面におけるバンドベンディング波数分解測定を進めている。
ほとんど未開である伝導帯の知見を得るために、低エネルギー逆光電子分光装置を導入し、価電子帯との統括的な評価による界面準位接合完全実験を開始した。
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利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL6U, BL2B
ラボ装置:2PPE(建設中), G3, A1, IPES, LEIPS
千葉大装置:PIES, PEEM
機能性分子薄膜の振動状態計測と励起子生成・拡散・再結合の研究
励起状態は基底状態の電子状態よりも更に複雑な現象を見せるが、太陽電池やレーザー開発に向けて、分子材料における励起子に関する知見が極めて不足している。異なる励起子状態を種々の分光法(低速電子エネルギー損失分光、光吸収分光、二光子光電子分光、内殻吸収分光)により生成し、物理モデルを検討している。
また各種振動分光により機能性分子薄膜の振動状態を測定し、弱相互作用による電子構造および振動構造への影響を調べている。国際共同研究による二次元検出器を利用したフォノン分散実験を開始した。
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SS (2007), JESRP(2009)
利用施設と装置
千葉大装置:HREELS
共同研究:Raman, FTIR, DRS
PGI研究所:二次元HREELS
分子双極子および分子四重極子のつくる局所ポテンシャルの電子状態や準位接合への影響
弱相互作用による分子内電荷分布の再配置は界面エネルギー準位接合に影響を与える。ファンデルワールス力や四重極子による静電力は弱い相互作用の源であるが、その影響を定量的に評価するための第一段階の研究を開始しいている。また多くの分子材料群の特徴である永久双極子をもつ分子群を基板表面に配向させることで、局所静電ポテンシャルを人為的に作製し、分子配向に依存した電子状態評価を行っている。配向制御技術により単分子層膜の誘電率、分極率等を見積もることに成功した。
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利用施設と装置
UVSOR:BL2B
Labo:A1, LEIPS
Chiba:PIES, PEEM
共同研究: STM, STS
自己組織化と分子認識機能の分光研究
表面場で織り成すパイ共役分子系の超格子構造や、分子薄膜の自己組織化機構の解明を目指している。また超分子系の固相膜を作製し、自己組織化や原子・分子捕獲などによる電子状態への影響を測定することで、分子認識機能について分光学的に研究している。プローブ顕微鏡実験を共同研究で推進し、構造と電子状態の相関研究を開始した。
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利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL2B
ラボ装置:gasUPS, A1, LEIPS
共同研究利用(千葉大装置:PIES, PEEM)
その他:STM, STSなど
分子薄膜の作製と評価:成長ダイナミクス、構造と分子配向
有機分子薄膜(高分子薄膜)の電子状態を議論する上で、試料調整方法の確立が鍵である。光電子放射顕微鏡(PEEM)、走査プローブ顕微鏡(STM)、高分解能低速電子線回折(SPALEED)、準安定励起原子電子分光(MAES)、X線定在波法(XSW)、軟X線吸収分光(NEXAFS)、第一原理計算シミュレーション等を用い、基板界面における単分子膜成長から結晶膜成長までの多様な集合状態について構造(分子配向)と成長を観察した。
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利用施設と装置
極端紫外光施設UVSOR:BL6U, BL2B
ラボ装置:SPALEED, MCPLEED
共同研究利用(千葉大装置:PIES, PEEM)
その他:STM, AFM, GIXDなど