大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所 協奏分子システム研究センター CIMoS

研究

第20回CIMoSセミナー
「魔女の雑草」ストライガの撲滅に向けた化学と生物学の融合研究
Chemical biology to combat against parasitic weed Striga

第20回CIMoSセミナー<br>「魔女の雑草」ストライガの撲滅に向けた化学と生物学の融合研究<br>Chemical biology to combat against parasitic weed Striga

講演要旨

 アフリカのサハラ砂漠以南の国々が、深刻な食糧問題をかかえていることは、世界中で広く認知されている。これは、増え続ける人口に食糧生産が追いつかないためだが、その原因の一端が寄生植物であるストライガ(Striga hermonthica)の被害によってもたらされていることはあまり知られていない。ストライガは、トウモロコシやソルガムなどの主食となる穀物に寄生して栄養や水分を横取りして育ち、寄生された作物は実をつけることなく枯れてしまう。このため、ストライガは、アフリカでは古くから「魔女の雑草」と呼ばれ、その蔓延は災厄として恐れられてきた。現在、ストライガによる耕作地の汚染はサハラ以南のアフリカを中心に5千万ヘクタール(日本の国土のおよそ1.4倍)もの広さにおよび、その農業被害は年間1兆円とも言われている。土中で休眠しているストライガの種子は、作物が根から放出するストリゴラクトンと呼ばれる天然化合物に反応して発芽することで効率よく寄生することができ一方、作物がいないところで誤って発芽してしまうと4日程度で枯死することが知られている。そのため、ストライガを強制的に発芽させることで「自殺発芽剤」へと導く人工ストリゴラクトンの開発が望まれてきた。我々は、蛍光ターンオン型ストリゴラクトンであるヨシムラクトンの開発を通して、ストリゴラクトン受容体の同定や、リガンドの加水分解を伴うダイナミックな受容機構などを明らかとしてきたが、最近の研究で、フェムトモーラーレベルで作用する有望な自殺発芽剤の開発に成功した。本セミナーでは、自殺発芽剤開発の道中で明らかとなってきた、ストライガにおけるユニークなストリゴラクトン受容機構について紹介する。

ref.
1. Uraguchi et al., "A femtomolar-range suicide germination stimulant for the parasitic plant Striga hermonthica", Science, 2018, in press.
2. Toh et al., "Structure-function analysis identifies highly sensitive strigolactone receptors in Striga", Science, 2015, 350:203-208.
3. Tsuchiya et al., "Probing strigolactone receptors in Striga hermonthica with fluorescence", Science, 2015, 349: 864-868.

日時 2019年1月10日(金) 16:00~17:00
場所 分子科学研究所 研究棟 201号室
題目 「魔女の雑草」ストライガの撲滅に向けた化学と生物学の融合研究
Chemical biology to combat against parasitic weed Striga
講演者 名古屋大学 土屋 雄一朗 准教授
http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/members/y-tsuchiya/

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