ごあいさつ
協奏分子システム研究センター
センター長 秋山 修志
協奏分子システム研究センターは2013年4月に発足し、生命科学から物質科学に及ぶ学問横断的な研究活動をスタートさせました。未踏の領域に切り込む若手研究者から、分野をリードするシニア研究者まで、異なる学問領域の研究者が集う、幅広くも層の厚いメンバー構成です。
当センターのミッションは、分子を軸足に「個」と「集団」を結ぶロジックを確立し、その原理をもとに斬新な分子システムを創成して、学問や社会へ貢献することです。
キーワードは「分子」と「階層構造」です。タンパク質分子を起点としてみましょう。タンパク質はアミノ酸から構成されますが、アミノ酸の側鎖はピコ~ナノ秒の 時間スケールで揺らいでいます。数十~数百のアミノ酸が球状に集まったドメインはナノ~ミリ秒で剛体的に位置を変化させ、さらにポリペプチド鎖はマイク ロ~ミリ秒で大規模な構造転移を起こします。
さらに上の階層を覗いてみましょう。タンパク質分子は他のタンパク質分子や分子集合体と相互作用し、複雑かつヘテロな環境を形成することで、空間的に大規模で時間的にゆっくりとしたダイナミクスを発現します。複雑な生体分子ネットワークを内包する細胞が、さらに他の細胞と相互作用して組織を形成し、それが集まって個体が形成されるわけです。
階層を大きく隔てた現象は、一見互いに因果関係が無いかのように見えます。しかし、アミノ酸側鎖の状態が変化すると、個体のレベルにまで影響が生じる例が実際にあります。分子に秘められた機能が、階層間の連動によりスケールが大きく異なる別階層にまで伝達されているわけです。視点を変えれば、ある機能性分子を基盤とし、そこに適切な階層間制御ロジック(ネットワーク構造)を構築すれば、高次レベルの機能発現やデバイス制御が可能となるはずです。
自然界には、分子とネットワークを柔軟かつ堅牢にカップリングさせた巧みな分子システムが散見されます。あたかも、キーとなる分子の奏でる機能や動態がネットワークを介して伝搬していくかのごとくです。当センターではこのような系を協奏分子システムと命名し、その解析や創成に取り組みます。その際、国内外の主要な研究拠点との連携を深め、協奏分子システム研究の国際的拠点となれるよう努力していきたいと思います。
研究活動や研究成果については、ウェブサイトからの情報発信、ワークショップ、セミナー等の開催を通じて広く社会に発信していきたいと考えています。当センターの活動に対する、ご協力とご支援をお願いいたします。
平成25年4月
秋山 修志