RESEARCH
我々は、構造生物学、遺伝子工学、分子生物学、および各種分光学的な実験手法を駆使することにより、遷移金属イオン、気体分子、光などの外部シグナル感知に関与するセンサータンパク質、および細胞内の遷移金属イオンの恒常性維持に関与するレギュレータータンパク質の構造機能相関の解明を通じて、外部環境に応答した生物の恒常性維持システムの作動原理を明らかにするための研究に取り組んでいます。
また、金属タンパク質や金属酵素が正しく機能するためには、遷移金属イオンあるいは遷移金属錯体を輸送してタンパク質に組み込む必要があります。我々は細胞内に金属イオンや金属錯体を取り込むための取り込み系や、金属錯体を生合成してタンパク質に組み込むための構築系の研究にも取り組んでいます。
気体分子センサータンパク質
生物は酸素、一酸化炭素、一酸化窒素等の気体分子に応答するためのシステムを有しています。これらのシステムでは、分子中に遷移金属イオンを含む金属タンパク質がセンサー分子として機能することにより、遺伝子発現、走化性制御、セカンドメッセンジャー分子の合成・分解を介した代謝制御などの様々な生理機能制御に関与しています。
金属イオンセンサータンパク質
また、遷移金属イオンそのものがシグナル分子となる系も知られています。生物にとって鉄などの遷移金属イオンは生存に必須ですが、遊離の金属イオンは生体毒性を有しているため、細胞内の金属イオン濃度を適正に維持する必要があります。遷移金属イオン濃度に応答して、金属の取り込みや貯蔵、排出に関わる遺伝子の発現制御に関わるセンサータンパク質が知られています。
最近、ヘム鉄を感知するセンサータンパク質PefRの結晶構造を報告しました。プレスリリースはこちらです。
遷移金属イオンの取り込み・排出系
細胞内における遷移金属イオンの濃度は取り込み系や排出系によって調節されます。 生物は周辺環境にある遷移金属イオンを獲得するために高い結合親和性をもつ金属取り込みタンパク質を細胞外に分泌して取り込んでいます。
金属タンパク質の活性中心構築系
細胞内に取り込まれた遷移金属は補欠分子としてタンパク質に組み込まれて機能します。金属タンパク質が正しく機能するためには、補欠分子が正しく形成され、組み込まれなければなりません。我々は金属酵素の活性発現に必須な金属中心の形成に関わるタンパク質の研究にも取り組んでいます。